Joplin MKIIヘビーユーザーに、またもや睡眠時間を消滅させる命知らずのものが現れてしまった!

デジタルファイル再生をメインとして日夜研究、努力を重ね各地の試聴会を実施させていただく日々も早くも3年が過ぎていきました。前職では「勤め人」ですからそんな趣味嗜好のことばかりやることができませんが、独立していろいろ未だ勉強の毎日となっています。

そこにDELA、fidataという非常に便利なオーディオ専用NASが存在してくれているおかげで非常に使いやすいものになってくれています。そうなると力が入るのが「デジタルファイル高音質化!」となってきます。

そこでハイレゾダウンロードはオーディオ用NASを使ってダイレクトダウンロードを、とか、ラトックシステムのリニア電源でCDドライブが化け物になってしまった、とか。こういった今までディスク再生では味わうことが出来なかった「個人レベルの技術介入」でより楽しんでいただきたい!これがデジタルファイル再生の醍醐味だと思うわけですよ。 しかし、その中でも一番気合が入っていたのはM2TECHのJoplin MKIIですよ。これは存分に楽しませていただきました。

そして新製品「Joplin MKIII」登場! ということでいち早く試聴記事を書いてしまいましょう。

JOPLIN MKIIIって何をするもの?

これはADコンバーターでアナログ信号をデジタル信号に変換するものです。しかしただのADコンバーターではなく、レコードの音をデジタル信号にするのを目的としています。
そのために

  1. カートリッジのインピーダンスを指定の数値に設定します。
  2. レコードがプレスされたときに使われたと思われるイコライザーカーブを31種類のプリセットされたカーブから選択することが出来ます。(イコライザーカーブ31種類の内訳はLP用18種、SP用8種、オープンリール用4種、FLAT、イコラーザーなしで合計31種類です)
  3. デジタル出力はSPDIFの場合はPCM 192kHz/24bit、USB出力は PCM 384kHz/32bit Integer、I2S出力(PS Audio方式のHDMI端子を利用)はPMC 768kHz/32bit Integerに加えてDSD256の出力をすることができます。
  4. USB出力はパソコンに接続して最大 PCM384kHz/32bit Integerのデジタルファイルとして取り込むことが出来ます。(これが一番楽しい!)

レコードはもともとアナログだから音が細分化されていないわけでこれをデジタルにしようとするにはハイスペックなものほどJoplin の価値が上がるってもん。 PMC 768kHz/32bitとDSD256がUSBで、って事前情報もありましたがこちらはI2Sのみでした。 これは残念だったもののMac miniのCPU処理が384kHz/32bit floatでいっぱいいっぱいだった感じもあるのでまあ妥当かなと。

普通はSPDIFで他のDACに接続、イコライザーカーブの違いを楽しんでいくものです。

イコライザーカーブというのはもともとレコードには低音を十分に入れることが出来ず(構造上の問題)、また、レコード針がずっとこすっているのでサーフェイスノイズという高音ノイズが存在します。そこでレコードをプレスするときは低音を絞り込み、高音は強めにし、再生時には逆に同じ割合で低音を強調、高音を減衰することでバランスを整え、サーフェイスノイズを消すようにしています。

ところが昔々は各レコードレーベルでこのイコライザー数値がばらばらでレコード盤にはどのカーブを採用しているなんてどこにも書いてない。またわかったところでそのカーブを忠実に再生する手もない。そこで昔々のアンプはトーンコントロールがついてリスナーが自分で違和感を直す必要があったのです。

そして1954年、アメリカのレコード協会が統一のカーブを使って聴きやすくしよう、と提言されたのがRIAAカーブというわけでした。そうなると1954年以降のレコード再生はRIAAカーブ一本でいいのかな?と思うでしょう。ところがJoplinを使うと「えっ、このレコードCapitolカーブがバッチリ」なんて、昨年発売されたSgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Bandがあったりするわけです。

つまりその後もRIAAばっかりじゃないみたい。でなくて外国盤はあまりRIAAじゃないのかしら? また、レコードが発売されたときのオーディオシステムは今の時代と全くの別物、したがってカーブのみならずオーディオの不調和も併せて面倒みてくれるのです。

今回プリセットがMKIIIが30種類だったのが31種類に増えています。そのカーブによる違いは菅沼さんの記事を読んでいただくと理解が深まります。

■レコード再生の未知の世界を検証する「1954年以降はRIAAカーブ」は本当か? ― 「記録」と「聴感」から探るEQカーブの真意

私は恥ずかしながら再生音の違いで選択しているだけで、そう考えるとただプリセットイコライザーと勘違いしている気もしてきました。

今回のMKIIIにおけるイコライザーカーブはMKIIと味わいが少し変わってきてますね。 全般的にMKIIよりマイルドな感じ。だけどカーブごとの特性はしっかり表現できているので聴きやすくなった印象。

特によくなったのはRIAAカーブがちゃんと聴ける音作りをしてきたところ。MKIIは個性豊かな各種カーブの中で無難で優等生っぽく面白くなかったRIAAカーブがMKIIIでは積極的にRIAAカーブで聴きたいと思うレコードも存在しています。したがってMKIIの経験を生かしたカーブ選択をしつつ候補をまた増やさなければいけないのはちょっと大変。

そして使いこんでから気になったのはゲインレベルの設定。レベルはできる限り高めにすべきで特にのちに説明するUSB出力の場合は32bit floatを採用するのでレベルの高さがそのまま情報量の量に比例します。(Vinyl Studioというソフトが32bit floatの対応になります)
MKIIIではもう少しゲインレベルが上げられたらなっ、ていうところもたまに。相変わらず使いにくいリモコンでもゲインレベルは独立したコマンドを持つようになったのでここは非常に良くなりました。

さて、今度はUSB出力ですね。これはMac miniを使用しています。Macに出力が直接入ります。で、コントロールのソフトはVinyl Studioを使用します。入力のサンプリングレートはVinyl Studioにて設定します。当然PCM384kHz/32bit float。
Vinyl Studioでは基本は取り込んだデジタル音源の編集ソフトですがCheck Levelから出力DACの設定ができますのでそのままモニターとして聴くことが出来ます。サンプリングレートの切り替えは簡単にできますのでいろいろ試せますが他の選択肢はありません。黙って384kHz/32bit float.
32bit floatにすることでピークレベルも相当持ち上げることが出来ます。Check Levelでのレベルメーターが相当赤くなるくらいでも歪みません。こんな感じでも大丈夫。

結果、split tracksがこのぐらいになるのがいいみたい。

この方式で本格的再生開始。使用1週間を経過し大体雰囲気出てきました。今回電源が強化されたおかげか根本的にS/Nは向上しました。雑味になるノイズ感は一掃されました。
イコライザーカーブの感想は前述のとおり。時にMK2のほうが良かったかな?と思わせるときも無きにしも非ず。もっと使いこむとだいぶ変わってくると思いますが、少なくともMK3になった価値は十分に感じ取ることが出来ます。

ということはまた取り込みやり直しか。トホホホホ…..

まあ、私の場合はこの仕事をしていますが恥ずかしながらあまりオーディオファイル的レコードを持たず、しかし、1970年台、1980年台はオンタイムでAmerican Top 40のアルバムは買いまくりました。今にすると日本版は非常に残念な音しか出ないものが大半でJoplin MKIIIを使うとよりだめなのがクローズアップされてしまいました。ところがMKIIIはRIAAカーブが良くなったおかげでだめだった日本版も少しは聴けるようになったのは大きいかなー。

I2S出力はまだつなげる環境がないのでこれからのお楽しみ。ということで、超お気に入りのJoplin新型なので先行して試聴記事を作成してみました。また、後記もやってみるかな。お楽しみに。

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